« 『健康ふしぎ発見ニュース』06年1月号 「手洗い」「飲酒の害」 | メイン | 『身近な野菜のなるほど観察記』 »

2006年01月11日

『子どもの脳を育てる栄養学』

子どもの脳を育てる栄養学

中川八郎・葛西奈津子著

京都大学学術出版会(2005.12.15)
四六判 288ページ
定価(本体1500円+税)


 脳は12歳ごろまでに完成するという。しかも脳に必要な栄養素や
その使われ方はからだの他の部分とずいぶん異なる。当然、大人と
子どもの違いも加味しなければならない。「健やかな脳を育むには
どうしたらよいのか」という見地に立って書かれた画期的な児童栄
養学の本。

 脳に必要な栄養素は、ただ単に足りないものを補えばよいのでは
ない。たとえば子どもがキレる原因として「セロトニン」という神
経伝達物質の不足が影響しているという考えがあるが、だからとい
ってそれを多く含む食品やサプリメントを子どもに食べさせればよ
いのかというと、答えは「ノー」だ。

 脳には、脳内に有害物質が入り込むことを防ぐ「血液・脳関門」
があり、神経伝達物質そのものは脳内に入り込めない。では食べも
のから「セロトニン」を補う方法は皆無かというと、これも答えは
「ノー」だ。脳のしくみを利用し、セロトニン生成の材料となる
「トリプトファン」と、それが脳内に運ばれるのを助けるホルモン
を分泌させる「糖」を同時に摂取すればよい。これはじつは民間療
法でも不眠を和らげるため、ホットミルクを飲むときに行っている
栄養素の組み合わせなのだ。

 また大人にはよいとされる栄養素も、それがそのまま子どもに、
また成長期の脳にもよいかというとそうではない。この見地から分
析されたカテキンなどの「ポリフェノール」「DHAサプリメント」
の章も必読。脳の栄養学から見ると、炭酸飲料やジュースの飲みす
ぎは脳やからだに必須の物質である「セレン」の欠乏症を招いてし
まうおそれがある。また糖分や脂肪を必要以上に毛嫌いすると脳に
とって良くないことにも科学的な論拠をもって触れている。

 本書の白眉は、「摂りすぎは不足と同じ」状態を生じる必須アミ
ノ酸についての章。とくに市販の「アミノ酸サプリメント」につい
てはその配合バランスが極端であり、そのまま子どもに与えるのは
危険ではないかと警告を発する。また著者の専門分野という体内時
計の関連から、朝食の大切さや生活リズムを整える大切さも説かれ
ている。

 いわば栄養学も不足の埋め合わせだけの「幾何の精神」から、食
べ合わせや人生の諸段階の違いも考えに入れた「繊細の精神」に転
換すべきと促す画期的な書物だ。


投稿者 ken : 2006年01月11日 15:30

コメント

コメントしてください




保存しますか?